T.Yach

モンスター

狩人のクラドック 著

いわゆる「モンスター」と,普通の動物を区別する明確な線はない.わ たしは人間以外の,魔力や知性を持つ生物,忌むべきアンデッド,われわれの 住む次元とは異なる世界から召喚されるものを集めた.以下に現れる生き物 の中には魔力も知性もなく,異次元から来るわけではないものも含まれてい るが,それは魔法によって造られたり自然に存在する魔力によって発生した と賢人たちによって看做されているためである -- つまり,リーパー,大ウミ ヘビ,異常な大きさのネズミ,クモなどのことである.中には,スライムなど, 完全に自然界の生き物も含まれているが,その理由は他のモンスターとは違 う場所に棲息していて,わたしのようにあえて探しまわらない限りめったに 目撃されないためである.

わたしが狩りをして過ごした年月から学んだことがあるとすれば, モンスターは必ずしも邪悪で狂暴とは限らないということだ.以下で述べられる生 き物の多くは,あまり近くへ寄らなければ人間に関心を示すこともない.し かし,例えばライオンは森では支配者として暮らせても羊の囲いに入り込ん だら殺されざるを得ないように,人間と「モンスター」がある程度以上近い 領域では共存できない場合も時としてある.そのときには,自然界と人類と のバランスに手を出すことが,わたしの仕事(あるいは,より正確には,わた しと同じ道をいま歩いている者の仕事)になるのだ.いずれにせよ,そういっ た生き物の素晴らしい点と恐れるべき部分を見てきた人間として,わたしは かれらが地上から駆逐されることを望まない.忌まわしいアンデッドでさえも, ときには悪事に対する公正な復讐者となることがある.たとえ世界を支配し ようとする者であっても,共存する生き物のために -- どんな異常な生き物 のためでも -- 生きていく余地を残すであろうと,わたしは信じている.


モンスター解説


風精 Air Elemental

この実体のない生命体は,形というものを持たない大気の精霊界の住人である.時折,仕事をするために強力な魔術師によってこの物質界に召喚される.かれらの力を使えば,風を操って物質的な生物を傷つけたり吹き飛ばしたりすることが可能である.他の力に束縛されていないならば,山の頂へ遁れることが多い.


コープサー Corpser

生きたコープサーの全身を見ることができたものはいない.この恐るべきモンスターは地中に棲み,魚が水中を泳ぐように,また鳥が空を飛ぶように,易々と大地の下を動きまわるのである.コープサーは貪欲なハンターで,大きな動物の足音を聞きつけると,強力な触手を地上に伸ばして獲物を引き裂き,食べるために地中に引きずり込むのである.コープサーに対して武器はほとんど役にたたないが,火を使えばコープサーを退治することができる.


デーモン Daemon

知られる限りもっとも純粋な邪悪の落とし子である醜悪なデーモンは,悪の道に染まった魔法使いの術によって冥い煉獄のプレーンから呼び出される.真に偉大な英雄のみにデーモンと一対一の勝負に勝つ見込みがあり,勇敢な戦士のグループであってもこの恐るべき悪魔と戦って生き残るのは難しい.

デーモンは貪欲であり,人肉も他の肉と同様に好む.かれらは黄金にも非常な執着を見せ,手に入る限り貯めこんでいる.血を求めて悪魔的な非道を働いていないときは,地下の洞窟を闊歩している.特に伝説的なダンジョンの奥深くにいることが多い.デーモンの骨には珍しい効果を持つ魔法のアイテムとして莫大な値がつく.


ドラゴン Dragon

ドラゴンは賢い,太古から生きつづけてきた種族である.かれらの怒りはたしかに凄まじいが,生来残虐でも貪欲でもない.他のことを言うものは間違っているのだ.ドラゴンが,人間がするのと同じように,服従から憤怒や激怒までの態度をあらわす力を持っていて,時にはそれが怒りの形をとって哀れな人間に向けられ,発揮されることがある,というのは真実である.もし人がドラゴンの鉤爪の下で死んだとすれば,しかしながら,それはおそらくその人間が無茶な欲求にかられて,伝説に名高いドラゴンの財宝を盗もうと愚かにも侵入したためである.ドラゴンの財宝の真否については,わたし自身がドラゴンのねぐらへ入り込んだことがないのでなんとも答えられない.わたしにできるのは,探求に取り付かれたものに助言をし,わたしがしたのと同じように分別を持つように勧めるだけである.ドラゴンの血でさえも,魔法のスペルを作る際に有益であるとして求められている.

ドラゴンの魔法の力は,何百ストーンもの体重にも関らず飛翔する能力や,高温の火炎を口から吐き出す能力などにも明らかである.ドラゴンほどその戦いざまが凄まじい生き物はいない.

ドラゴンは洞窟やダンジョンに棲息しており(他の邪悪な生き物に邪魔されないだけの力を持っているのだ),財宝や自分の卵を大事に守っている.ドラゴンの寿命は千年単位ではかられるほどであり,いつまでも成長を続けるので,もっとも賢く年を経たドラゴンは,同時にもっとも巨大な怪獣である.


地精 Earth Elemental

この生命体は大地の精霊であり,風精が普段は形のないプレーンに住んでいるように,地精は真空の存在しない世界の住人である.地精は実に強力な破壊マシーンであり,土砂崩れの持つ粉砕する力と,山のような耐久性を兼ね備えている.さらに,地精は魔法を使って地面を思いどおりにねじ曲げることができる.


エティン Ettin

エティンは,ブリタニアで知られる人間型種族の中でも抜きんでて巨大であるが,それ以上に特別なのは,頭部を2つもっている点である.エティンの頭はいつも互いに口喧嘩していると言われるが,それはたんなる空想にすぎないかもしれない.エティンは家族でいっしょに住み,サーパント・スパイン山脈の周辺でもっともよく見られる.エティンは愚かで狂暴な生き物だが,あるていどの知性を持ち,ひどくなまったブリタニア語を話すことができる.エティンは黄金を奪ってため込むために旅人を襲う山賊である.(一部の部族は原始的な鉱山で金鉱を掘っている.)エティンは,狭い山道を通っている旅人に巨大な岩を投げ付けるという,卑怯な攻撃方法で悪名が高い.


火精 Fire Elemental

炎でできた体で触っただけで相手を焼いてしまう火精は,恐らく精霊の中でもっとも破壊的である.幸い火精はこの世界の気候の中では長時間生きていることができず,火山地帯の溶岩や火口付近でしかめったに出会うことはない.


ガーゴイル Gargoyle

多くの人々はこの変わった生物のことを悪魔的存在だと信じているが,実際にはそれは誹謗である.かれらは知的で文化的な種族である.人間に対してまったく親しみを持っていない(さもなければ人間達の誤解も解けるかもしれない)が,かれらはかれらなりの風変わりな理念のうえで名誉を尊んでいる.ガーゴイルの習慣や風習は,わたしにとっても,不可思議なものであり,平和裏に人間と共存することは不可能であるかもしれない.もしそうなってしまったら,わたしは大きな損失だと考える…


ゲイザー Gazer

この自然ならざる怪獣は,それぞれの先端に目玉のある無数の蠢く触手を生やした,空中に浮かぶ生首の姿をしている.このような恐るべきモンスターがどのようにして発生したのか,わたしにはわからない.わたしが知る冒険者の中には,ゲイザーの肉を食べてもなにも悪い影響はなかったというものもいるが,わたしは想像するだけでもぞっとする.


幽霊 Ghost

暗く密やかなダンジョンが,前時代にその迷宮を構築した者の霊魂だと信じられている,かれら死霊の住処である.かれらは自分が永遠に失った肉体というものを渇望するのか,黄金と肉を求めて生きているものを(不透明でぼんやりしていても確かに現実の傷を負わせる鉤爪で)攻撃する.かれらは肉をむさぼるが,楽しみや栄養を得ているとはわたしには思えない.


大ネズミ Giant Rat

大ネズミは,名前のとおり,単なるげっ歯類のライオンほどの大きさのあるものである.大ネズミはダンジョンの中でも一番不潔で汚らしい,気味の悪い区域に群れで棲息している.


大サソリ Giant Scorpion

巨大に育った害虫の中でももっともおそろしいのがこの大サソリである.やはり巨大な針の毒は,一撃で大の大人を倒すほど強力である.巣で金貨が見つかることがよくあるが,価値を知っているわけではなくただ光るものを好むという性質によるものらしい.


大クモ Giant Spider

大クモは人間ほどの大きさがあり,人間と同じほどの狡猾さを有す.かれらがなんらかの言語を持っているかどうかはわからないが,ワナの仕掛けかたや守りかたは極めて利口である.大クモの巣からとれる糸はいくつかのスペルに必須であるため,その恐るべき能力にも関らず,糸を求めて大クモを探すものは数多い.


ハーピー Harpy

この汚らわしい獣は女性の頭と鳥の体を持つ.人間らしい形はあるが,わたしはハーピーは知性を持たないように思う.ハーピーは小さな群れで,獲物の頭上を飛びまわり鉤爪やくちばしで空中から攻撃する.カラスやカササギが光るものを集めるように,ハーピーも金貨が好きである.ハーピーの羽を使って矢を作れば特別な力が得られると信じているものがいるが,その種のことを研究している人間に聞いたところ,それは誤りであり極めて危険な思い込みだという.


ヘッドレス Headless

ヘッドレスという名前は,その姿が頭のない毛むくじゃらの人間に似ていることからついた.その姿のせいで多くの人が幽霊だと信じているが,詳しい研究によればヘッドレスは肉体的存在で,腰の部分に感覚器があるという.黄金へ固執したり人間に似た姿をしてはいるが,単なる利口な動物にすぎないとわたしは考えている.


幽鬼 Liche

アンデッドの中でももっとも希でもっとも恐れられている,実際もっとも恐ろしい幽鬼は,強大な魔術師が不死の精神を得て死後も生きつづけているものである.幽鬼は,肉体が死んだあとでも,生前の魔力をすべて保ち,しかし人間的な感情というものは失っている.幽鬼はおそらくデーモン以上に恐れられている唯一のモンスターである.


トカゲ人 Lizard-Men

この爬虫類は粗暴だが,きわめて知的である -- おそらく人間と同程度の知性を持っているが,文明がもたらすはずの穏健な性向は持たない.かれらは黄金を愛し,十分な自衛能力を持たないパーティーを襲う.


モングバット Mong Bat

ハーピーやヘッドレスと同様,モングバットも人の頭をしたコウモリという,人間と動物を組み合わせた姿をしている.モングバットは臆病な生き物で,1匹では恐れる必要はないが,地下の暗い中で群れをなして奇襲する技に長けている.


オーガ Ogre

この野蛮な生き物はオークの親戚で,しかしオークより大きい.かれらは獰猛かつ愚鈍だが,ある種の理性も持ち合わせている.ほかの知的な種族と同様黄金への欲求が強い.オーガは暴力的だが臆病でもあり,戦いが不利になると逃げ出す.


オーク Orc

オークはもっとも古くからの人間の敵だが,最近では多くが地下の隠れ家へ追い込まれている.オークはブタに似た顔と筋肉質の,人間的な身体を持つ.古くからオークは人肉を食らうといわれているが,わたしの考えではかれらは人間の持つ黄金を狙っているのであり,肉のために戦うのではない.オークは残酷かつ悪辣な連中であり,最近の地上はずいぶんと平和になっているが,近い将来オークたちの大規模な反撃があるだろうと予告するものもいる.


リーパー Reaper

リーパーはあくまで動物であって植物ではないが,地面に根を下ろし,そこから長いツタのような触手を周囲に伸ばしている.リーパーに捕まった不運な動物や人間は口のところまで引きこまれる.リーパーは自分の姿をごまかし,相手に見つかる前に獲物を捕らえるため,薄暗い場所を住処に選ぶ.


ネズミ人 Rat-Men

よこしまな魔術の創造物であるネズミ人は,ネズミの特徴を完全に備えているが,人のように歩く.ネズミ人は装飾品を身につけ,武器を装備し,そのほかにも知性をうかがわせるいろいろな様子を見せる.かれらはあくどい,盗みをもって生きている生物で,戦闘になると臆病である.


大ウミヘビ Sea Serpent

おそらくブリタニア最大の生き物である大ウミヘビは,戦艦を丸ごと捕まえて破壊することができる.そのすさまじい大きさにも関らず,ある種の魔法のスペルに必要とされるその鱗を求めてさかんに狩られている.


大蛇 Serpent

この大蛇は何世紀にも渡ってロード・ブリティッシュのシンボルであり,ブリタニアの正式な紋章になっている.大蛇はふだんは慎重な動物だが,すみかに侵入してきた人間を襲うのに躊躇はしない.ときどき,ロード・ブリティッシュに自分の勇気を示そうとする騎士によって狩られることがある.


スケルトン Skeleton

死体の骨が動きまわるのは見るだに恐ろしいが,実際にはスケルトンはたいした戦死ではなく,訓練を積んだ戦士に対してはグループでなくてはかなわない.幽霊と同様になんらかの超自然的な方法で肉を食べ,消化する.倒されたスケルトンの骨はいくつかの暗黒の魔術に使われる.


スライム Slime

スライムは完全に本能だけの生き物で,魚や虫ほどの知能もない.スライムは生きているものでも死体でもなんでも,触れたものをすべて消化して生きている.金はスライムの酸でも溶かされず,スライムのいるところでは金貨が見つかることも多い.数世紀のあいだに,黄金が獲物をおびき寄せるということをおぼろげに学習したのかもしれない.


トロール Troll

この種族はブリタニアの人間型種族の中でも一番非人間的である.トロールは狡猾だが,社会的な活動はまったくしない.トロールは受けた傷から非常な早さで回復できるといわれている.


水精 Water Elemental

水精は水でできていて,水のなかに住む.水精は波を制御する力を持っている.幸いわれわれのプレーンにいる水精はほとんど海の底にひそんでいて,人間と接触することは滅多にない.


鬼火 Wisp

鬼火は実体を持たないが,賢人の話ではかれらは霊魂ではなく,なんらかの形で生きている光だという.鬼火は賢い生き物で,人間よりも賢明かもしれない.この奇妙な生き物の能力をうんぬんすることはわたしの知識を越えている.かれらは人間の行動に関心を持っているらしいが,先に危険を感じたわけでもないのに人間を攻撃したという話は聞いたことがない.


ゾンビ Zombie

ゾンビは腐りかけた死体が,邪悪な魔法によってかりそめの生命を与えられたものである.制作者のもの以外に意志というものを持たず,ほかのアンデッドと同じように黄金と生き物の肉に異常な欲求を示す.よろよろとした緩慢な動作しかできず,大集団に出くわすのでなければ熟練した戦士なら簡単に破壊するか回避することができる.


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